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口腔外科
親知らずは抜く? 抜かない?
どんなにしっかり歯磨きをしている人でも、「親知らず」による痛みや腫れを起こす可能性があります。
親知らずとは、主に思春期ごろから、生えてくる一番奥の歯のことで、最大で上下左右4本生える場合があります。
年齢的には、思春期以降であればいつでもトラブルになる可能性はあります。無事に一生涯過ごせる方もいれば、80歳を過ぎた頃になって急に親知らずが痛くなった…というケースもあります。
親知らずを抜く・抜かないの判断としては、腫れや痛みなどのトラブルが起こった際に、親知らずが歯として機能(咬む)しているか? その後歯磨きがきちんと行なえる場所か?などが大きな判断基準になります。
そこですでに痛くなっている人も、もしかしたら親知らずが痛くなるのかも?
と心配な人にもお役に立てるように、「親知らず」について分かりやすく説明します。
問題になることが最も多い、「斜め型」の親知らずを抜くための具体的な手順は次のようになります。
親知らず周辺の歯肉から麻酔をする場合と、少し長めの針を使用して、親知らずより奥の部分に麻酔を行なう場合の2種類があります。
歯が歯肉でよく見えない場合は、メスなどを使い、歯の頭の部分が見えるようにすることがあります。
もちろん麻酔が効いているので、痛みはありません。
歯の傾きによって削る量はまちまちですが、あまり傾いていない場合には、まったく削らないこともあります。傾きが多い場合に歯が見えている部分の周囲を削っていきます。
この程度の傾きであれば、骨は削らないで抜くことができます。
斜めになって前の歯にぶつかっている場合には、そのまま引っ張ってもぶつかって抜けません。そのため、抜くときにぶつからないように親知らずの歯の頭を削ります。傾きが大きいときは、この時点で歯の頭の部分を全て削ることもあります。
手前の歯にぶつかる部分をカットしてから抜く場合もございます。
歯の頭を削った後、残りの部分を取ります。
場合によっては、抜きやすいようにさらに根を2つに分けることもあります。
器具を歯の周囲に少しづつ差し込んで緩め抜きます。
歯肉を広げた時などは、抜いた後を縫合します。縫合した場合は、通常1~2週間後に糸を抜きます。
所要時間は、難易度によっても変わりますが、30分から1時間30分程度かかる場合が大半です。麻酔は治療後に2~4時間で切れます。
親知らずの痛みを放置し、歯の周囲に感染した細菌が、さらにその奥にある筋肉などの隙間に広がりながら顎の奥のほうまで伝わるという、最悪のケースも存在します。
どのようなことが起こるか、順にご説明いたします。
1.親知らず周辺が腫れる | まずはごく一般的に親知らずが痛くなる症状が現れます。 |
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2.感染が顎の下に拡がる | その症状が繰り返されたのち、だんだんと口もあけられないほど炎症がひどくなります。 これは一般の親知らずの症状とまったく一緒です。 |
3.感染が喉周辺にまで拡がる | 顎の下の部分が明らかに膨らみ、発熱や全身の倦怠感などがひどくなります。 この時点で、病院で治療を行ったり、処方された薬を飲んでも症状がさらに進行してしまう場合は、 一般の歯医者さんから「口腔外科」がある病院に紹介されて入院することもあります。 |
4.感染が心臓周辺にまで拡がる | 一般的ではありませんが、可能性としては顎の下に拡がった感染がさらに喉の脇にまで進行するケースがあります。首を伝わり、胸の周辺に広がっていく。感染がここまで拡がると一刻を争う事態となります。 胸にまで感染すると、一気に心臓周辺にまで広がるリスクがあるため、最悪の場合、死亡するケースも考えられます。 首から下に感染が広がってしまった場合の死亡率はなんと20%以上とも言われているのです。 |
親知らずの痛みの原因は、「細菌感染」です。
このため適切な時期に治療や抗生物質などの投与が行なわれれば、ここまで大きな問題になりません。
しかし痛みや腫れがあるのを何度も我慢し、腫れがひどくなった段階でもなお治療を行わないでいると、
危険リスクが高くなることを知っておかなければなりません。
まっすぐに生えず、腫れたり痛くなったりした親知らずは、抜歯するのが最も確実な治療法になります。
親知らずは一度抜けば、その後一生トラブルに悩まされる心配はなくなるからです。
抜歯を少しでも先送りしたい場合、予防的ブラッシングのほかには、親知らず周囲の歯茎の修正や、歯と歯茎の隙間部分の洗浄などを行うなどの対処法が一般的です
親知らずの抜歯の際には、いくつかのリスクもあります。主に、以下のようなリスクです。
歯を抜いた後に起こる一般的な反応として、腫れることがあります。
個人差がありますが、2日~2週間程度腫れることもあります。
親知らずは骨の中にもぐりこんでいたり、口の中の奥にあるために、器具が入らず、一般的な歯よりも抜きづらいため、時間がかかったり、一回で抜くことが出来ない場合があります。
抜歯後、傷口がなかなか塞がらずに痛みが長引くことがあります。
これは骨密度や場所の影響で、歯茎に覆われるはずの抜歯後の穴が塞がらずに、骨の一部が露出した状態が長引いてしまうことがあるためです。
下の顎の骨の中に親知らずが潜り込んでいるような親知らずは、すぐそばを走る神経に接触している場合があります。このため親知らずをを抜いた後で、唇などにしびれた感じが残ることもあります。
この場合、短期間で元に戻ることもあれば、長期間経過観察となることもあります。
上の親知らずを抜いた後で、鼻とつながりのある上顎洞と呼ばれる空間が口の中とも繋がり感染を起こすことがあります。
これらの抜く際のリスクの他、上記のように、抜かないために起こってくるリスクというのも考えられます。抜くリスクと抜かないリスクは、「前向きのリスクと後ろ向きのリスク」とも考えられます。
もしどちらもリスクを伴い、どちらを選択しても同じようなリスクがあるのならば、前向きな方向(抜歯)を選択することをオススメします。
親知らずを抜いた後は、どんなことに注意をしたらよいのでしょうか?
基本的には、一般的な歯の抜歯後と同じになります。
歯を抜くと出血します。「かさぶた」の状態になるまでは、血が出やすいため、アルコールや運動、長時間入浴などの血行が良く(=出血しやすい)なるようなことをしてはいけません。
もし抜いた穴から血がだらだら出てくるようならば、清潔なガーゼやティシュなどを大きく丸めて穴の上に置き、しっかり咬んで圧迫して出血を止めます。ガーゼ全体が真っ赤にならなければ止血は完了です。抜歯当日は少量の血がつく程度は正常です。
絶対にしてはいけないことは、口の中で水をころがし、抜いた穴の中のゼリー状のもの(これが「かさぶた」)を洗い流してしまうことです。
「かさぶた」を汚いと思って剥がすと、いつまでたっても治りません。傷口が細菌に感染することもあります。
下の親知らずを抜いた時に起こりやすいのが「抜いた後の腫れ」です。
こんな時は、軽く冷やしてやると腫れる度合いを少しは減らすことが出来ます。抜いたあたりのほほの外側から冷却ジェルシートなどを貼り付けても効果があります。
かさぶたが綺麗に出来なかったり。
剥がれたりした場合は、抜いた穴がなかなか塞がらず、骨の一部分が外から見えてしまっていることもあります。(ドライソケット)抗生物質などの薬剤を抜いた穴の中に入れたり、再び麻酔をしてから穴の中をきれいにするなどの治療を行います。
「ドライソケット」がひどい場合には、歯を抜いた後、1ヶ月以上も痛くなる場合もあります。
完全に予防することは難しいので、抜いた後にズキズキ痛みが続いていたら、まずは病院で診せるようにしましょう。
一般に親知らずの抜歯後は、完全に落ち着くまでに1ヶ月程度、抜歯後の穴が塞がるまでに3~6ヶ月程度掛かることもよくあります。
口を開こうとすると顎関節(耳の穴の前にあります)や顎を動かす筋肉が痛む、あるいは十分には大きく口を開けられない。または口の開け閉めで顎関節に音がする。
という症状がでます。
一生の間、二人に一人は経験すると言われているほど多くの方が経験します。症状が音だけであった場合、これは首を回したり、肩を動かして音が出るという状況と同じです。
そのような音を気にして整形外科を受診する人はいないと思いますが、顎関節の場合、耳のすぐ隣にあるために「音が気になる」という人がいます。
しかしこの音を消すためには手術が必要になることから、世界的には「音だけであるなら手術すべきではなく、治療する必要はない」とされています。ですから顎関節症の症状が始まったとしても、痛みや口の開けにくさが一時的なものであったり、音だけで他の症状がなければ治療の必要はないかもしれません。
ちなみに、音だけであれば最低でも人口の20%近くの人は顎関節の音を持つとされています。
また顎関節や顎を動かす筋肉の痛み、あるいは顎関節症による口の開けにくさで、実際に治療が必要になる人は症状を自覚した人の中の5%程度と推定されています。医療機関に来院される患者さんでは女性が多く、年齢は10歳代後半から増加しますが、20~30歳代で最大になり、その後は年齢が増えるとともに来院する患者さんは減少します。
前に述べた顎関節や筋肉の痛みや口の開けにくさ、関節音のうちの一つがあり、他の病気の症状ではないと判断できた場合に顎関節症と診断します。
一般的には、症状がどのように始まり、どのように変化したかをお聞きし、顎関節や筋肉、口の中を診査し、必要に応じてエックス線撮影やCTによって骨の異常の有無を調べ、骨以外の関節構造や筋肉の問題についてはMRIによって調べる場合もあります。
顎関節症で出現する痛みや口の開けにくさは、親知らずの炎症や他の病気でも出ることがある症状なので、顎関節症であることを診断するためには、他の病気によって出てきている症状ではないことを確認する必要があるのです。
顎関節症の病気の状態(病態)は現在4つに分類されています。
最も多いのは関節内にある関節円板(図1)というクッションが前方にずれることで起きる「カクンカクン」という音が出る状態(図2)、あるいはずれがもっと大きくなることで大きな口が開けられなくなる状態です(図3)。
特に口が大きく開かなくなると、口を開けたり食品をかもうとするときに痛みが出ます。この2つの状態で来院される方が全体の60%ほどになります。
これ以外では顎関節そのものには痛みがないのですが、下顎を動かす筋肉がうまく働かなくなり、口を開けようとすると頬やこめかみの筋肉が痛むという状態、あるいは関節円板のずれはないのですが、口を開けようとすると顎関節が痛む捻挫に似た状態があります。
4番目はこれまでの3タイプほどは多くありませんが、関節を作っている骨が変形するタイプの顎関節症があります。このタイプは長年顎関節症が続いていたり、年齢の高い方に多くみられます。
昔は「かみ合わせの悪さ」が原因と考えられていました。
今でも「かみ合わせが悪いと顎関節症を初めとして、全身にも色々な不都合が起こる」という意見もインターネットには沢山あります。
しかしもしそれが事実なら、歯科医療事情がまだ整っていない発展途上国には顎関節症患者があふれているはずですが、国際学会に出席してもそのような話しを聞くことはありません。
では何が原因なのでしょうか。
実は原因を一つに絞ることができないというべきなのです。顎関節症の原因として現在世界的に認められている考え方は「多因子病因説」といいます。
関節や筋に負担のかかる要因は色々あります。そのような要因がタイミングよくいくつも集まって負担が大きくなり、その人の持っている耐久力を超えると症状が出るという考え方です。
そのような要因には色々なものがあります。
このような要因の一つ一つは大きなリスクとは言えないので、それぞれを症状に対する「寄与因子」と言います。一つ一つは小さな要因ですが、このような寄与因子が多数集まることによって、症状を起こすほどの原因となるわけです。
つまり、この癖が数ある寄与因子の中で最大の原因になっていることが分かったのです。このため、顎関節症の患者さんにこの癖をみつけた場合には、先ず一番にこの癖を治すべきということになったのです。
まず、知っておいていただきたい世界的にも認められている治療方法の原則があります。
それは治療方法を選択する場合に、その治療による効果がなかったときに、患者さんにその治療による被害を残さない治療(可逆的な治療)を選択すべきであるという考え方です。
具体的には、かみ合わせを良くするためとして、歯を削る、被せ物をする、歯列矯正をするといった治療(不可逆的な治療)は避けるべきです。
このような治療を受けても症状の改善がなかった場合、元の状態に戻すことができません。
このような治療を行わなくとも症状を改善させることができます。それはスプリント(マウスピース)、開口訓練、マッサージや湿布、習慣や癖を修正する行動療法などです。
一般的にはスプリント(マウスピース)による治療を行います。これは上顎あるいは下顎の歯列に被せるプラスチックの装置です。
これを夜間睡眠中に使用することで、夜間の無意識かみこみで生じる顎関節や筋肉への負担を軽減させます。
痛みが強い時期には鎮痛薬も投与されるでしょう。
また、痛む部位にして近赤外線レーザーを照射する、あるいは電気刺激をすることで筋肉を自動的に収縮させて血液の流れを改善する場合もあります。多くの場合はこれらの治療によって、症状が消失します。
しかし治療開始から2週間経過しても改善傾向がない場合は、担当医に申し入れて専門医へ紹介してもらうといいでしょう。症状の改善がない場合に「歯を削ってかみ合わせを調整しましょう」と提案された場合は、その「咬合調整処置」は拒否することをお勧めします。
上にも述べましたように、世界的にはかみ合わせを調整するという不可逆的治療は行うべきではないとされていますし、「咬合調整処置」に関して全世界から研究論文を集め、その治療効果を調べた結果、効果がないという結論を得たうえで、日本顎関節学会の診療ガイドライン作成委員会が2012年に、学会のホームページ上に公表した「顎関節症に対する初期治療の診療ガイドライン」において「咬合調整は行うべきではない」という提言がなされているからです。
その患者さんがどのような状態(病態)にあるかを細かく検討し、またその患者さんがどのような原因(病因)をもっているのかを調べ、病態に対する改善方法と病因に対する是正方法とを同時に並行して行います。
その治療の大部分は外科的な方法を用いることはない治療ですが、ごく限られたケースでは手術による外科療法が選択される場合があります。外科的な治療には関節鏡を使用した手術あるいは関節を切開して行う手術があります。
顎関節症の痛みや開口しにくさといった症状の改善には、患者さん自身による家庭でのセルフケアが重要であり、そういったセルフケアを積極的に行うことが世界的にも提唱されています。
セルフケアなしで症状の完全消失はあり得ないといっても過言ではありません。
逆に言うと、セルフケアによる十分な自己管理ができているなら顎関節症は始まりませんし、治った後の再発もありません。
顎関節症が急に起こったときは痛みが強く、口も手の指1本の幅くらいまでしか開かなくなる場合もあります。
そのような時は以下に記載したような生活上の注意を心がけてください。そのようにしているうちに、多くのケースでは数日で痛みがやわらいできて、口の開き方も多少なりとも改善するはずです。そうなったならもう少し積極的な方法を取り入れるようにしてください。
具体的方法
時折、顎関節症の症状が消えていないのに、むし歯治療や入れ歯治療を受けてしまう患者さんがおいでです。症状が消えていないというのはどのような状態かというと、通常の生活をしている中ではあまり不自由を感じてはいないのですが、体調が悪化したり、疲労が溜まってくると口が開きにくくなり、大きく開口しようとすると顎関節や筋肉が痛むという状態です。
これは言うなら「隠れ顎関節症」の状態であり、以前の顎関節症から完全には回復していないのです。このような状態にある時は左右にある顎を動かす筋肉のバランスが取れていないために、元々のかみ合わせからずれてかんでいるのです。
このようにかむ位置が不安定な状態のままでかみ合わせを作る治療を行ってしまうと、不安定な位置ですから当然ですが、その位置でかみ続けることが苦痛になります。結局はまた治療をやり直すことになるのです。
歯科医の中にはそのような状況を判断できない場合もあるため、このような無駄な治療を受けないためには、患者さん自身が顎関節症の症状の消失を確認できる事が必要です。
完全に機能が回復した場合は、最大まで口を開いても痛みはないはずです。
両手を使って無理矢理口をこじ開けても痛みが出ません。
こうなっているなら回復は完全と言えます。
音に関しては残るかもしれませんが、痛みがなく音だけであれば心配はいりません。
問題は痛みです。痛みが完全に消えているなら、歯科治療を受けても大丈夫です。
顎の開閉運動、そしゃく運動も安定しているはずですので、歯科治療によってもっとかみやすくなるでしょう。
また歯列矯正治療を受けて美しい歯並びにすることも可能です。こうしてかみ合わせを良くすることは、
原因のところで説明した寄与因子を減らすことにもなりますので、再発のリスクを小さくすることにもなります。
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